Black in White
「な…………っ、」
「その傷、どうせまた喧嘩でもしたんでしょう?そんな不良にはうちの可愛い小春ちゃんはあげられないわね」
「え?」
「あれ、聞いてなかったの?私の本名は水島松子。小春ちゃんは兄さんの子…つまり私の姪っ子よ」
「……………!どっこも似てねぇ」
龍一の訝しむような視線に松子は益々面白そうに笑った。
そこへ用事を済ませたらしい小春が戻ってくる。
「店長~!亜矢さんが呼んでます」
「了解」
呼ばれた本人は意味深な笑みを残してパタパタと小走りで去っていく。
エプロンの紐を解きながら目の前に再び座る小春に、龍一は唐突に言った。
「彼女にはどこか妙な所がある」
「へ?」
「さっきの英文」
ぱちくりと丸く目を開いた小春は彼の言わんとする事が分かり、なんだ、と呟いた。
「ちゃんと分かってるんじゃない」
「面倒くさかっただけだよ」
白い紙に印刷された“odd”をなぞり、その解釈にふむふむと小春は頷いた。
「それってお前の事だろ」
「違うもん」
「分かってねぇな」
「もー…って、あれ?」
龍一の赤茶色の髪の下から、小さくまだ古くはない傷跡が覗くのを見て、小春が何気なく手を伸ばしたその時。
ガシャーンッ!!