Black in White
「小春ちゃん、そろそろ上がってもいいよ~」
「あ、はぁい!」
白いテーブルから食器を持ち上げ顔をあげると、海側の窓から鋭く夕陽が射した。
海沿いの道に佇むこの真っ白な店は、割と早く、夕陽が沈む頃には閉まる。
最後の仕上げにテーブルを拭いていた時、カラン、と音を立てて1人の高校生が入ってきた。
「あれ?もしかしてもう終わり?」
「いいえ、ギリギリセーフです。お一人様ですか?」
にこりと笑って小春はメニューを手に、椅子を引いて誘導した。
「あぁ、悪ぃな。なんか飲みモン…何だこの“まっちゃんスペシャル”って」
「店長スペシャルとも言います、日替わりジュースですよ。って言っても、まぁミックスジュースみたいなものですけど」
「よく分かんねーけどそれでいいや。安いし。」
「畏まりました」
透明なグラスを出しながら、小春は何気なく窓辺の席に座る彼を見やった。
少し赤い色の入った茶色の髪が美しい夕陽を反射して輝く。
高校生にしては大人びているような、しかしその表情は子供そのもので、何となく気になってしまう。