Black in White
「あの子猫なら、ちょっと足を怪我してたみたいだから、手当ての為に連れて来たの。今はまっちゃんさんがとりあえず預かってるよ」
「あぁ…なら、いいけど。………これ、やってくれ。俺が持ってても食えねぇし」
「きっと喜んでくれるよ」
ニコッと笑って小春は思い付いたように言った。
「あたし、水島小春っていうの。あなたと同じ制服の子達は、よくここに来てるから仲良くさせてもらってます。あなたの名前は?」
「…神崎龍一。高3。またグレーのあいつの里親探しに来るよ」
そう答えると、龍一は小銭をポケットから取り出し、小春に差し出す。
「あたしも探してみるね。…いつでもまた来て下さいね。」
あぁ、と短く答えながら既に龍一は背を向けていた。
小春は目を細めながら、龍一の髪は熱い夕陽そっくりだと思った。
夕陽が沈んだばかりの、温かさの残るドアを開くと海の香りがした。