Black in White
今の時期、燃えるような陽が沈む丁度その頃仕事は終わる。不意に顔を上げ眩しげに目を細めた小春は、それを反射し赤く輝いて見えた彼の髪を思い出した。
まだ寒くはないだろう。
店の前、いまだ夕陽の温もりの残る白く小さなテラスにいる彼女……子猫をチラリと覗いてみる。
案の定彼女の主人になるであろう栗色の髪の同級生と戯れていた。
彼女達はもう既に、まるで友達のように打ち解けつつあるようだ。
「名前はなんていうの?」
ドアの隙間から栗色が覗く。両手で持ち上げられた小さな猫は足を愛らしくじたばたと動かした。
「まだ決まってないの。…あ、もうそろそろ龍一君が来るかな」
「リュウイチ?それって、もしかして……」
カシャン、と自転車の止まる音がして見覚えのある制服が近付いて来る。
「…あ。やっぱり」
「あれ、お前こんなとこで何してんだよ」
制服のままで現れ、しゃがんでいた栗色のショートヘアを見下ろす形で立ったのは龍一だった。
「夏子ちゃんと龍一くんが知り合いだったなんて、びっくりしちゃった」
テラスの方へ2人分のグラスを持った小春が出てきてはにかむ。
「同級生だよ」
「同級…え?あれ?だって、」
高校の制服を着崩す龍一にチラリと視線を向けて首を傾げる。