Black in White

「正しくは元同級生?コイツ留年してやんの」

夏子は龍一を指差すとにっと笑った。

「うるせぇ」

「そうなんだぁ、じゃあ同い年なんだねっ。あたし、夏子ちゃんと同じ大学なの」

小さな子供のように嬉しそうに笑う小春を、龍一は不可解そうに眉を寄せて見た。

「…お前、変。」

「え!?そうかな…?」

「納得しちゃだめよ、はるちゃん。龍一、今更話題逸らそうとしちゃって」

「余計なこと喋るなって」

「あれれ~?何か都合の悪い事でも?」


夏子が悪戯っぽく龍一を覗き込む。

「何もねぇよ」

目を逸らした龍一は視線を下げて、大人しく此方を見上げる淡いグレーの猫を見た。


「心配しなくても、ちゃあんと可愛がるから」

「…さんきゅ」

「いやに素直ね、気持ち悪いわ」

「お前なぁ…」






不意に小春がそっと撫でると、子猫は眠たそうに目を細めた。

「あ、そうだ!龍ちゃんが、名前付けない?」

「誰が龍ちゃんだ」

「ね?」

良いことを思い付いたとばかりに目を輝かせる小春に、暫し龍一は考えた。

「女の子なの」

「………さくら」

「さくら?可愛い名前!」

「桜に埋もれてたんだよ、そいつ」



しっとりと足下一面を覆い尽くす淡いピンク。甘い香りが満ちているように見えるその春の中に、小さな猫は独り沈むように佇んでいた。



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