【長編】唇に噛みついて
そうだよね……。
浮かれてたから……忘れてたけどさ。
須藤にとってあたしも、遊びなんだよね。
たくさんいる女の中の1人。
すっかり忘れてた。
何だか……胸が、痛いや。
そしてムカつく!!
「あんた等さ……」
「は?」
握りこぶしをギュッと作る。
「そういう行為は、大好きな大切な人とするものなの!大事な行為を軽い気持ちですんじゃないわよ!」
キスとかエッチとか。
そういうのは、軽い気持ちじゃ絶対しちゃ駄目なんだから!
キッと睨みつけて、あたしは須藤を見上げて睨んだ。
「須藤!!あんたもね、今までいろんな女と遊んできたみたいだけど……それは最低な事よ!そういう奴あたしは大っ嫌い!!」
今まであたしはどの恋にも本気だったから、それは許せない。
でも……。
「きっと……あんただって、愛を求めてるんでしょ?たった1人の愛を、求めてるんでしょ?」
そう言った後、あたしは女の子達を睨んだ。
「須藤だって心はあるんだよ。それを軽い気持ちであんた等は踏みにじるな!!」
格好いいから、エッチしたいとか。
外見だけで……須藤を決めないでほしい。
だって、あたし……。
須藤の優しい無防備な笑顔とか。
優しい声とか。
見ちゃったから……。
俯いている須藤を見つめてあたしは口を開く。
「須藤……あんた、本気で愛してほしいなら、自分自身がその人を本気で愛さなきゃ駄目だよ」
そう言うと、須藤は何も言わずに俯いたままだった。
その姿を見て、涙がこみ上げてくる。
……ただのあたしの八つ当たり。
こんなきつい言い方しかできなくて、口が悪くて。
大事な時に気の利いた言葉もでなくて……。
情けなくなってくる。
「……返事くらい……しなさいよ」