【長編】唇に噛みついて
でも、悔しいけど心臓はドキドキいってて。
顔は真っ赤になってて。
あたしは下唇を噛んだ。
「お願いだから離して……」
ドキドキと驚きのせいで、あたしの涙はすっかり引いていた。
あたしは少し掠れた声でそう言うと、須藤はあたしの首元に顔を近づけてきた。
「聖菜の気持ちを聞くまで離さない」
「な、何それ。何であんたに言わなきゃいけないのよ」
あたしは首元に触れる須藤の唇にビクッとしながらも、少しきつい口調で聞く。
すると須藤はあたしの首にキスを落とす。
「俺が知りたいから」
って……。
ホント、どこまでワガママなのよ。
どこまで……自己中なのよ。
ムスッとしていると、スルッと襟元から浴衣の中へ手が入ってくる。
!!?
「何してんのよ!やめて!」
あたしは目を見開いて須藤を睨んだ。
そして慌ててその手から逃れようとする。
すると須藤はそんなあたしの必死の抵抗もすんなり交わして、あたしの肌を撫でる。
「嫌だ。きーちゃんが言うまでやめない」
「っ……」
須藤の冷たい手があたしの肌に触れて、あたしは言葉を失う。
そんなあたしを見て、ニッと微笑んで、須藤はあたしの唇を指でなぞる。
「きーちゃん、俺の事どう思ってる?」
真っ直ぐな目であたしの目の中を見つめてくる。
あたしは吸い込まれそうな綺麗な瞳のせいで言葉が出てこない。
どう思ってる……って。
そんなの……。
「言わない」
言えないよ、今は。