【長編】唇に噛みついて
グッと喉に何かが詰まった気がした。
すると須藤はあたしの太ももに手を触れる。
「っ……やめっ」
触れられる恥ずかしさに、頭がおかしくなりそうだ。
真っ赤になって熱を帯びた頭がクラクラする。
完璧……須藤にやられてる。
抵抗してみせると、須藤はフッと笑ってあたしを自分の方に向かせた。
そしておでことおでこをくっつける。
「聖菜……聞かせて?」
そんな優しい囁くような甘い声で言われたら。
そんな全てを見透かしてしまいそうな瞳で見つめられたら。
もう……何も抵抗なんてできないよ。
クラクラしてボーっとしてしまうあたしは須藤のポロシャツの裾をキュッと掴んだ。
そして須藤の胸に顔を押し付けて目を瞑った。
「……好き」
気づいたらその言葉を口にしていた。
ずっと心に閉まっていた想いが、気持ちが。
全て……今、須藤へさらけ出してしまった。
ゆっくりと顔を上げると、須藤は満足そうに微笑んだ。
そして優しい手のひらがあたしの頬を包んで。
大輪の花火が空にはじける下で、あたし達は唇を重ねた。
「ねぇ、須藤……」
「ん?」
ギュッとあたしを抱き締めたまま須藤は返事をする。
「須藤は……あたしの事」
そう呟いた瞬間、須藤は強引にあたしの唇を塞ぐ。
そのせいであたしの言葉は消えてしまった。
どう思ってるの?……って、聞かせてくれないの?
心の中でそう問いかけると、須藤は意地悪な笑みを浮かべた。
「どう思ってると思う?」
またそんな意地悪な質問。
何て答えたらいいのか困るような質問して、面白がってる。
こんな場面でも余裕な須藤が悔しくて、あたしは須藤を睨んだ。