【長編】唇に噛みついて
「ずるい……いつもそうやって教えてくれない」
そう言って少しあたしは涙目になる。
すると須藤はフッと笑ってあたしを抱き絞めた。
「聖菜と同じ気持ち」
「えっ?」
……同じ気持ち?
それって……好きって。
「って言われたら嬉しい?」
……て。
「は?」
「っぷ」
キョトンとしていると、須藤は噴き出した。
そしてあたしを余裕の笑みを浮かべて見下ろす。
「好きだよ」
そう呟いた後。
須藤は真剣な目であたしを見つめる。
「……ホント?」
あたしは少し戸惑いながらも聞き返す。
すると須藤はフッと笑った。
「本当」
その言葉に胸が跳ねる。
嘘……。
嘘、嘘……。
信じられなくて言葉が出ないでいると、須藤はきつくあたしをまた抱き締める。
そして耳元で囁いた。
「俺をこんなにベタ惚れにさせたんだから……責任取ってよね?」
「っは?」
キョトンとした瞬間、あたしは軽く唇を噛まれた。
そして須藤は満足そうに微笑む。