【長編】唇に噛みついて


もう嫌だ!
この場から立ち去りたい!!


あたしは真っ赤になる顔を隠しながら、席を立って早足で食堂を去った。
そして急いでトイレの中へと入る。
誰もいない洗面所に両手をついて、鏡を見つめる。


改めて大きな鏡で見て……。
やっぱりくっきりと紅い印。
き、キスマーク!!


どうしよう……。
あたし、今までこれを出した状態で過ごしてたんだよね?
うわ、恥ずかしすぎる……。
誰かがもしかしたら見てたのかもしれないって思うと、恥ずかしすぎる。


「はぁ……」


あたしは俯いて大きなため息をついた。
すると背後に気配を感じてバッと振り返る。
と、腕を組んだ真弓が立っていた。


「……真弓ぃ」


真弓を呼ぶと、真弓はあたしにゆっくりと近づいて鏡越しにあたしを見つめる。


「随分くっきりつけられたわね」


「っう……」


思わず赤くなっていると、真弓は目を細めて微笑む。


「須藤くんって激しいんだぁ」


「違う!してないから!」


慌てて否定すると、真弓は眉間に皺を寄せる。
その顔を見て思わず顔が引きつる。


マジで怖いんだもん。


「……どういう事?」


どういう事……って聞かれたら困るんだけど。
何て答えればいいの?


言葉に困って喉が詰まる。


「だから……つけられただけ、なの」


こういうの言うのって恥ずかしい。


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