【長編】唇に噛みついて
カァッて顔が熱くなる。
すると真弓は目を細めた。
「須藤くんと付き合ってんの?」
「っ……」
“付き合う”って言葉、こんなに恥ずかしいものだっけ?
そう聞かれるのってこんなにもドキドキするものだっけ?
真っ赤になる顔を見て、真弓は目を見開いた。
「マジ?」
「うん。マジ」
そうぎこちなく頷くと、真弓は固まる。
え?反応なし?
何故?どうして?
「あのー……、真弓?」
遠慮がちに呼んでみるけど、反応なし。
「真弓さーん?」
今度は顔の前で手をヒラヒラしてみるけど、やっぱり反応なし。
キョトンとしていると、真弓はしばらくしてあたしの肩を掴んだ。
「よかったじゃん!!」
「え!?」
突然大声を出されてあたしはビクッと肩を震わせた。
「ホントよかったじゃん!!」
「う、うん……」
「よかった!よかった!」
「うん……」
すごく喜んでくれてて、すごく嬉しい。
真弓に喜んでくれて嬉しい。
でもさ……。
「いい痛い!!」
背中をバシバシ叩かれて続け、いい加減堪えられなくなったあたしは真弓の手を振り払う。