【長編】唇に噛みついて
◆3◆
18歳
⌒⌒Kiyona
\/side
夏休みも終わりが近づいてきた頃。
あたしは仕事を終えて、会社を出ようとしていた。
何か今日は疲れたな……。
大きく伸びをしながら欠伸をした時。
「やぁ!聖菜ちゃん」
「げ……」
出た……品川!!
軽く手を開けて笑顔であたしに近づいてくる。
その姿を見てあたしは口を閉じた。
一気に不機嫌になっていると、品川は笑顔で口を開いた。
「素敵な欠伸だね」
「は?」
「口大きく開けて、聖菜ちゃんらしいね」
ムカ……。
その笑顔にあたしは品川を睨んだ。
「あの……今の言葉、貶してるようにしか聞こえないんだけど?」
苛々しながらそう聞くと、品川はニッコリ笑った。
「そんな事ないよ」
こいつ……。
ホントにムカつく。
何か存在自体が、ムカつく……。
「あんたさ、ホントにあたしをムカつかせるの得意だよね」
引きつった笑顔で品川を見ると、品川は微笑んだ。
「それは褒め言葉なのかな?」
く、こいつ……。
どこまで鈍感な訳?
それとも単なるアホ?
どっちにしても、ムカつく……。