【長編】唇に噛みついて


ゴホゴホ咽ながらあたしは真弓を見た。


「はい?」


「だーかーらー。須藤くんが聖菜に会いたいんだって」


は?


「何で?」


キョトンとしながらあたしは、噴出して汚れたテーブルをふきんで拭いた。
すると真弓は肩をすくめた。


「知らないわよ。あたしに聞かないで」


そこちゃんと聞いとけよ。って言ってやりたい。
すると真弓はあたしに顔を近づけた。


「で、今日待ち合わせするから」


「は?」


「何か間島くんも来るらしいしぃ♪着いてきてよね?」


あー。
そういう事。
結局の所、間島くんに会いたいだけ、なのね。


「やだよ」


あたしはそう言って最後のスープを飲み干した。


「何でよ!?」


あたしの返事に真弓は眉間に皺を寄せて顔を思い切り近づけてきた。
あたしは少し顔を引いて離れる。
そしてどんぶりを乗せたおぼんを手にとって席を立つ。


「面倒臭い」


理由を考えるのも面倒臭くて、あたしはそう言った。
すると真弓はあたしの後をついてくる。


「何で何で!新しい恋のチャンスだよ!?」


「悪いけど、あたしは今男性不信なの。興味ない」


おぼんを食堂のおばさんに返して無表情で真弓を見た。


「それに……高校生なんて嫌」


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