【長編】唇に噛みついて
そして甘いキスをあたしの唇に落とす。
「んっ……」
冷たい須藤の唇があたしの唇に触れるたびに、熱を帯びていく。
そっと名残惜しそうに離れた唇から漏れる吐息。
目と目が合うと、あたしは恥ずかしさに顔を真っ赤にした。
すると須藤はあたしを睨んだ。
「お前、もっと自覚しろよ」
「え?」
「俺をどこまで軽い男だと思ってんだよ」
「っへ……」
キョトンとすると、須藤はキッとあたしを睨んだ。
そして真っ直ぐに目を見つめてきた。
「俺が聖菜にどれだけ本気か、お前は気づいてない」
そう言って須藤はあたしの頬を撫でた。
「だから、安心しろ。ここまで本気にさせたからには、簡単には離さないぜ?」
意地悪な笑みを浮かべて、須藤はあたしの耳に噛み付いた。
ねぇ……。
須藤、何でだろう。
今日の須藤は、昨日の……今までの須藤より色っぽく見えた。
大人っぽく見えたよ。
あたしは涙を拭って須藤に微笑んだ。
そして須藤の首に腕を回して、頬にキスした。
遅れちゃったね。
今まで言い忘れちゃったね。
でもね。今日のこの日を。
あたしは誰よりも祝いたい。
18年前、生まれてきた今日を、あたしは心から祝福してあげたいんだ。
「須藤……誕生日おめでとう」
そう言うと、須藤は優しく微笑んだ。