【長編】唇に噛みついて
そう決めたんだ。
ひとつ年を取って、俺はひとつ大人になった。
でも、人はみんな年をとる。
俺がどんなに年をとっても、聖菜は俺と同じく歳をとる。
一生埋まらない年の差。
どんなに頑張っても、その差は決して埋まらない。
頑張ったって聖菜には追いつかない。
でも……。
それでもいい。
今ある全てで、今ある自分自身の全力で。
聖菜を受け止めたい。
聖菜を守ってやりたい。
そう思うんだ。
不器用でごめんな。
思ってもない事ばっか言ってごめん。
意地悪しかできなくてごめん。
素直になれなくてごめん。
でもそんな俺を好きになってくれて。
「……ありがとな」
眠っている聖菜の髪を撫でて小さく呟いた。
“ありがとう”なんて恥ずかしくて面と向かって言えないけど。
そんな俺を許してくれよ。