【長編】唇に噛みついて
なんて言ったらいいのか分からなくて、あたしは静かに俯いた。
すると須藤は俯いたあたしの頭を撫でた。
そうだ……。
あたしは、ただ……。
「恥ずかしかったから……心の準備ができてないから……」
積極的な須藤に戸惑って、拒んだんだ。
そんなあたしの心の声が、まるで聞こえたかのように。
須藤はそっとあたしを抱き寄せて、耳にキスを落とした。
「あたしね?」
「ん?」
「別にしたくない訳じゃないんだ」
ただね?
「須藤はただしたいだけなんじゃないかって、そう思っちゃって……」
彼女っていう特別になれたからこそ。
須藤の彼女になれたからこそ。
「他の子と一緒じゃ嫌だったの」
そう言うと、須藤は少し戸惑ったように頬を掻いた。
そしてゆっくりと口を開く。
「あのさ……俺、今まで求められてたからしてた訳で。こうやって求めるのは、きーちゃんが初めてなんだけど」
え……?
あたしが、初めて?
キョトンとしていると、須藤はあたしを睨んだ。
「お前ムカつくくらい鈍いな」
「は!?」
にぶっ……!?
ギョッとしていると、須藤はあたしの頬を指で突っついた。
そしてまた意地悪な笑みを浮かべた。
「だから、別にそんな悩む必要ないと思う」
そう言って須藤は髪をクシャッとした。
じゃぁ……須藤は、あたしを初めて求めてくれてるの?
あたしだけを……。