【長編】唇に噛みついて
「新しいのじゃなくて、俺はきーちゃんのものがほしい」
そう言って零は、あたしの胸元にあるネックレスに手を伸ばした。
少し触れられた指先に、ビクッとしながら零を見上げると優しく微笑んだ。
「これ……ちょうだい?」
おねだりするようにあたしを見つめる零に、ドキッとしながらもあたしは眉を下げて聞いた。
「ホントにこれでいいの?」
別に新しい訳じゃないし。
ちょっと傷ついてるし。
女物だし……。
こんなものでいいのかなって思った。
でも須藤は首を横に振って、微笑んだ。
「それがいい」
そこまで言われたら、あげない理由もなくてあたしは首の後ろに腕を回してネックレスを外した。
そして零に差し出すと、零はニッと微笑んだ。
「きーちゃん、つけてよ」
「え!?」
あたしを見下ろしながらそう言う零を見て頬を赤く染めると、零はクスッと余裕の笑み。
「つけてよ」
そう言われて、あたしは真っ赤に頬を染めながらゆっくりと零の後ろに回った。
そしてネックレスを首元に回す。
何か……。
緊張しちゃう。
何気なく零に視線を落とすと、零の背中が目に止まった。
細いくせに……肩幅広いんだな。
細身だけど……程よく筋肉ついてるし、やっぱり男の子なんだな……。
あたし……いつも、抱しめられた時この背中に腕回してるんだ。
改めて見てみて、年下である事を忘れさせられた。
だって……その背中は、男の子じゃなくて男の人だったから。
ボーッとしながらも、ネックレスをつけると、それに気づいた零がそっと後ろを振り向いた。
「サンキュ……」
そう言われた瞬間。
あたしは零の背中に抱きついた。