【長編】唇に噛みついて


何だか無性に……須藤の背中が愛しくなって。
零が恋しくなった。
くっつきたいって思った。


「どうした……?」


いつもと違う優しい零の声に心が温かくなる。
その声に反応して、あたしは零に回す腕の力をギュッと強くした。
背中に顔を寄せると、零の心臓の音が聞こえてくる。
トクントクン……っていう零の心臓の音と、あたしの心臓の音が重なって心地いい。
あたしはそっと目を閉じた。


「……好き」


そう小さく呟くと、零は振り返ってあたしを引き寄せた。
そしてフッと余裕の笑みを浮かべて、顔をゆっくりと近づけ、唇が触れ合う数センチ前で止まった。


「……知ってる」


そう言って零は優しいキスをした。


いつだって偉そう……。
あたしが零を好きで当たり前って顔してる。
年下のくせにムカつくくらい余裕で……。
でもそんな俺様な零に惚れてしまってる。
悔しいけど、零には敵わない。
だって……あたしは零が大好きだから。
何言われたって嫌いになれないんだ。
それくらい好きなの。


「離れて行かないでね……?」


胸に顔を寄せながら目を瞑って呟くと、零はあたしの頭をポンと叩いた。
そしてフッと笑った。


「離すかよ、バーカ」


見つめ合って微笑むと、あたし達は何度も見つめ合って、何度も甘いキスをした―――……。


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