【長編】唇に噛みついて
零の大きな影があたしに覆いかぶさって、それに気づいたあたしは顔を上げた。
すると零と視線が絡み、零はフッと微笑む。
……あ。
「ど、どうしたの?今日……会う約束してなかったよね?」
そう聞いてみると、零ではなく……真弓に抱きつかれている間島くんが口を開いた。
「実は、今日は真弓さんと聖菜さんに話があってきたんです」
「へ……?」
……話?
あたしだけでなく、間島くんに抱きついている真弓もキョトンとしている。
ゆっくりと零を見上げると、顔色ひとつ変えずに零は腕を組みながらあたしを見下ろした。
すると間島くんは笑顔で言った。
「来週の日曜日、乙女川高で文化祭があるんですけど……。2人を誘いに来たんです♪」
え?文化祭?
「一応おれ達のクラスは、執事カフェなんで♪」
その言葉に反応したのは真弓。
目を輝かせながら間島くんを見上げて言った。
「えっ!?間島くん執事やるの!?」
「うん。須藤もだよ」
「えっ」
零……も?
零が……執事の格好?
絶対似合うに違いない!!
「行きたい!行きたい!」
すっかり興奮してしまったあたしは、バッと手を上げて叫んだ。
すると真弓は眉を上げてあたしを見た。
「おっ、珍しく乗り気」
そりゃそうだ!
零の執事姿……見たいもん!