【長編】唇に噛みついて


零の大きな影があたしに覆いかぶさって、それに気づいたあたしは顔を上げた。
すると零と視線が絡み、零はフッと微笑む。


……あ。


「ど、どうしたの?今日……会う約束してなかったよね?」


そう聞いてみると、零ではなく……真弓に抱きつかれている間島くんが口を開いた。


「実は、今日は真弓さんと聖菜さんに話があってきたんです」


「へ……?」


……話?


あたしだけでなく、間島くんに抱きついている真弓もキョトンとしている。
ゆっくりと零を見上げると、顔色ひとつ変えずに零は腕を組みながらあたしを見下ろした。
すると間島くんは笑顔で言った。


「来週の日曜日、乙女川高で文化祭があるんですけど……。2人を誘いに来たんです♪」


え?文化祭?


「一応おれ達のクラスは、執事カフェなんで♪」


その言葉に反応したのは真弓。
目を輝かせながら間島くんを見上げて言った。


「えっ!?間島くん執事やるの!?」


「うん。須藤もだよ」


「えっ」


零……も?
零が……執事の格好?
絶対似合うに違いない!!


「行きたい!行きたい!」


すっかり興奮してしまったあたしは、バッと手を上げて叫んだ。
すると真弓は眉を上げてあたしを見た。


「おっ、珍しく乗り気」


そりゃそうだ!
零の執事姿……見たいもん!


< 171 / 286 >

この作品をシェア

pagetop