【長編】唇に噛みついて


ほっぺのズキズキとした痛みと胸のドキドキが交わる。
すると零は優しい瞳であたしを見下ろすと、あたしの手を取りギュッと握った。


「だから……何があっても俺から離れんなよ」


そう言いながらあたしに右手の小指を差し出してきた。
その指を見て、一瞬キョトンとしたけど……。
すぐにその意味が分かってあたしは微笑んだ。


「零は……こういう事恥ずかしくてしない人だと思った」


からかうように言うと、零は不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。
そして意地悪な笑みを浮かべた。


「俺を馬鹿にするなんて……いい度胸してんじゃん」


そう言い終えるかってところで、零は軽くキスを落とした。
不意過ぎるキスに口を開けて目を丸くすると、零は微笑んであたしの小指と自分の小指を絡めた。
その指切りを見つめると、零はあたしの瞳を見つめる。


「……約束、な?」


「うん」


あたし達の約束。
どんな事があっても絶対に守るよ。
あたしも必死で零にしがみついてるから……。
零もあたしを離さないでいてね。


その心の中で呟いて、あたし達は深いキスを交わした。


「ん……チュ」


静かな部屋に響くリップ音に顔を真っ赤にしながら、あたしは懸命に零を受け止める。
すると零はゆっくりとあたしをベッドに寝かせると、立場が逆になりあたしが下になる。
それに気づいて少し目を開けると、零は唇を離し目と目が合った。


いつもなら……。
この状況なら、拒んで起き上がるあたしだけど。
今日はそんな気にならなかった。
少しでも零に触れていたい。
零とくっついていたいって思ったから。


そっとあたしの両側にあるベッドについてる手に触れると、あたしは零を見上げる。


「あたし……いいよ」


「ん?」


「あたし……零と、してもいいよ」


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