【長編】唇に噛みついて


眩しい日差しに目を覚ますと、カーテンから温かな日差しが差し込んでいた。


……もう、朝。


目を擦りながら上半身を少し上げると、あたしは我に返った。


「……おはよ、きーちゃん」


そう優しく微笑みながら言って、寝転がっている零。
布団から出ている上半身は裸で……。
その姿を見て、今の自分の格好を思い出す。


……そういえば、あたし。
何も着てない!!


あたしは慌てて布団を被って自分の体を隠した。
その姿を見ていた零はクスクス笑いながら言った。


「そんな……今更隠さなくたって、全部見たっつーの」


「っな!」


なんて事言うんだ!
仮にも……見たとしても、そんな事言わないでよ。


「……恥ずかし」


ボソッと呟き布団に顔を埋めると、零はあたしの顔を覗き込むように体を動かした。
接近してきた零にあたしは真っ赤になる。


だって……近い!!


真っ赤な顔のまま目を逸らせなくなったあたしは零を見つめる。
すると零はあたしの髪を撫でながら微笑む。


「きーちゃん可愛い」


「もうー……恥ずかしいからやめてよ」


こいつ絶対あたしの反応を楽しんでる。
そうやって面白がってる。


それが悔しくてあたしは布団で顔を隠した。
するとあたしの顔にかぶさっていた布団を取られ、眩しくなり目を細める。
しばらくして目が慣れると零の顔が間近にある。


「顔隠すなよ」


「っ……」


そう言いながらあたしの頬にキスをする。


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