【長編】唇に噛みついて


顔が強張るのが分かる。
あんなとこ戻ったら……。
もしあいつがいたら……。
今度こそ殺されるかもっ。


そう思ってた時だった。


~♪♪


ポケットに入れていた携帯が鳴り出した。
あたしはそれに気付いて携帯を開くと、真弓から着信。
慌ててあたしは通話ボタンを押して耳に当てた。


「もしもし!?」


『って声でか。ちょっとあんた……須藤くん殴ったんだって!?』


あ……。


「うん」


あたしは苦笑いしながら答えると、電話の向こうから真弓の溜め息が聞こえてきた。


『あんた……何やってんのよ』


呆れた声であたしに言うから、あたしはムッとした。


「だって、あいつムカつくんだもん」


『ムカつくからって殴るなよ』


た、確かにそうですよねー……。


あたしは真弓の言葉に少し反省した。
すると真弓はまた溜め息をついて言った。


『須藤くんあんたが忘れたバック持っててくれてるから。昨日行った居酒屋の隣のファミレス行きな』


え?


「えぇ、あいつだけー?」


『当たり前。あたし今から間島くんとご飯だしぃ。んじゃね』


「あっちょ……」


止めようとしたけど、あたしの声も聞かずに真弓は電話を切ってしまった。
空しく聞こえてくるのは、プープー……って機械音だけ。


あの猫かぶり女ぁ……。

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