【長編】唇に噛みついて


自分ばっかぁ。
あたしはあいつを殴ったんだよ?
その後……2人で会うとか……。
気まずいの分かってくれよぅ。


内心行きたくなかったけど。
ものすごく行きたくなかったけど。
あたしの財布入ってるし。
行かない訳にはいかない。


「しょうがない……覚悟決めて行くか」



で……。
あたしはその後ファミレスに行った訳なんだけど。


「バック預かっておいたんだから奢ってよね?」


そう言って両頬赤い奴は微笑む。
あたしはそいつから視線を逸らしながら言った。


「あのさ……」


「ん?」


笑顔で首を傾げる。


「何で隣に座ってんの?」


ここはファミレス。
しかも4人がけの席。
2人だけなんだから、向き合って座ればいくない?
なのに何でこいつは隣にいる?


するとそいつはあたしの顔を覗き込んだ。


「俺は興味持ったら片時も離れたくないタイプなんだよね」


はぁ?
意味が分からん。


あたしはキッとそいつを睨んだ。


「あたしは離れたくて仕方がない」


するとそいつはあたしをキョトンと見下ろした。
そして冷たい声で言い放つ。


「あれ?2度も殴られても大事なバックを持っててくれた恩人にそんな事言っていいの?」


う……。
反論できない。


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