【長編】唇に噛みついて

崩れ始める歯車


⌒⌒Kiyona
\/side


「ちょっと、聖菜!」


「ん?」


会社にやって来たあたしの元に突進してくる。
その姿に驚きながらあたしは返事をした。


「須藤くんと何があったのよ!?」


「え……」


「距離を置こうってどういう事!?」


何でその事を知ってるんだろう。
相変わらず、情報早いな。


「どういう事って……そのままの意味だよ」


そう言って目を伏せると、真弓は眉間に皺を寄せた。


「その意味が分からないから聞いてるんじゃない」


確かにそうなのかもしれないけど……。
でも……。


「間島くんと、同じ理由」


相手を考えた上の理由……だよ。
零の将来の為。


するとあたしの答えを聞いた真弓は、少し低い声で言った。


「意味分かんない」


「え?」


「何で!?好きなのに、大好きなのに、何で離れなきゃいけないの?」


真弓の言葉があたしの胸を刺す。
でもその痛みを堪えるように、あたしは唇を噛み締めた。
すると、真弓は小さく呟いた。


「離れてもいいなんて考えてるなんて、聖菜の気持ちもこんなもんだったんだね。こんなの……零くんが可哀想。」


何で、そんな事言うの?
あたしの気持ちはこんなもん?
そんな訳ないじゃん。


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