【長編】唇に噛みついて
でも……。
やっぱり怖いよ。
「やっぱりっ……っこ、わいよぉ……」
一気に溢れる涙。
それと一緒に、あたしの不安も溢れた。
「零っが、いなくなっちゃうかもっ……って思ったら」
どんどん溢れてくる涙を必死に拭うと、真弓はあたしの頭を抱えるように抱きしめた。
「もう、いいよ……分かったから」
頭から伝わってくる真弓の温もりが優しくて、さらに泣けてきた。
溢れてくる涙を堪えずに流すと、真弓は静かに口を開いた。
「何か……自分がホントに自分の事しか考えてなかったんだなって、聖菜の話聞いて思った」
そう言って真弓は眉を下げて微笑む。
「聖菜の考え方は……いい事だと思う。でも、やっぱりその考え方を聞いても、あたしは……自分勝手かもしれないけど、その人から離れなきゃいけないとは思えない」
「っふ……」
「あたしが聖菜だったら、須藤くんが夢を叶える姿を傍で見守ると思う」
そう言うと、真弓は眉を下げて微笑んだ。
「あたし、間島くんと会って話してくる。だからさ。聖菜も須藤くんと話してみなよ」
「え?」
キョトンと真弓を見上げると、微笑む。
「きっと……聖菜の気持ち伝えれば、須藤くんも考え変わると思うよ?」
零の……考えが。
ちゃんと夢へと向いてくれるように、なるのかな。
だとしたら、あたしは零に伝えたい。
そして、零のホントの気持ちも知りたい。
そう考えると、あたしの答えは1つだった。
「……うん」