【長編】唇に噛みついて
睨みつけると、頬杖をついてあたしを意地悪な笑みで見つめてくる。
くそぅ……。
顔だけは格好よくてムカつく。
澄んだ瞳は吸い込まれそうで見つめられたら逸らせなくなりそう。
あたしは不覚にも見惚れてしまう事が悔しくて、フイッと視線を逸らした。
すると奴はあたしの髪に触れてきた。
「っな!?」
あたしはバッと振り返ってそれから逃れると、そいつはキョトンとする。
そしてフッと笑うと口を開いた。
「そういえばさ……?名前なんていうの?」
「は?」
そういえば名乗ってなかった。
でもさ?
「人にものを尋ねる時は、まず自分からでしょ?」
あたしはそう言って睨んだ。
睨んでいるあたしを見て、一瞬キョトンとするけど再びフッと笑った。
「やっぱあんた面白いわ。……俺は、乙女川高校3年須藤零」
お、乙女川!?
ってあの金持ちのお坊ちゃまやお嬢様が通う高校!
あそこって確か……頭もいいんじゃなかったっけ?
あたしは唖然とした。
こんな……最悪のチャラ男が。
あんな学校通ってるなんて……。
今改めてそいつの制服を見て思った。
すると須藤はあたしの顔を覗き込んで甘い声で囁いてくる。
「で?俺、名乗ったよ?あんたの名前は?」
名乗られてしまった以上、名乗るしかない。
あたしはムスッとしながら仕方なく答えた。
「……柏原聖菜」
「年齢は?」
「23歳」
ムッとしながら答えると、須藤は眉を上げた。