【長編】唇に噛みついて
枕にポタポタと染みこんでいく涙を見つめていると、テーブルの上に置いてある携帯が鳴る。
零……!?
ガバッと起き上がって携帯を手に取り、開く。
すると画面に、違う名前が表示されてあたしの淡い期待は一瞬で消え去った。
りっちゃん……?
りっちゃんからの着信に少し戸惑う。
だって……。
昨日慰めてもらっちゃったから。
何となく気まずい。
一瞬通話ボタンを押すのに戸惑っていたけど、いつまでも鳴り止まない着信音に我に返ったあたしはボタンを押す。
「……はい」
泣き過ぎて掠れた声で返事をする。
すると電話の向こうから優しい声が聞こえてきた。
『あ、きー?』
「う、うん……」
やっぱり、気まずい。
りっちゃんもそうなのか、その後重い沈黙が続く。
どうしよう……。
何か言うべきなのかな。
でも、何を言おう。
困っていると、その長い沈黙をりっちゃんが破った。
『あのさ……』
「うん」
『今日、何か予定あるの?』
え……?
「予定?」
特にないけど……でも。
「何でそんな事聞くの?」