【長編】唇に噛みついて
「へぇ……もっと若く見える」
それは、23歳がおばさんだって事?
それは、あたしが幼く見えるって事?
どっちにしてもこいつ……失礼。
「どうせ、あんた等高校生から見たらあたしなんておばさんでしょうね」
悪意を込めてそう言ってあたしは、メロンソーダを口に含んだ。
すると須藤はあたしの肩に腕を回して顔を近づけてきた。
「いや?俺的には大人の女性って感じでいい」
ってお前が言うと何かヤラシイ。
あたしは肩に乗っている須藤の手の甲をパシッと叩いた。
「いてっ」
咄嗟に手を引っ込ませてあたしの肩から腕を放すと、須藤は痛そうに甲を擦ってあたしを冷たい目で見つめる。
「てめぇ……恩人になんて事すんだ」
って怖い!!
顔を見てあたしはギョッとした。
すると須藤はジリジリとあたしに顔を近づけてくる。
窓側に座っているあたしは逃げ場もなく中へ中へと逃げる、が。
そんなスペースもなくあたしは身動きがとれなくなってしまった。
「ちょっ……何なのよ」
あたしは内心パニックながら強気に須藤を睨んだ。
すると須藤はあたしの首筋に顔を近づけてクンクンと匂いを嗅ぐ。
「何か聖菜いい匂いする」
「……っ」
接近している整った顔と。
その甘い声に、あたしの心臓はドッキドキ。
あたしは須藤の胸元に手を置いてグイッと押す。
でも須藤はまったく動かない。
人いっぱいいんのに、こいつは何考えてるのよっ。
「ちょっと離れてよっ」
あたしはまた胸元を思いっきり押すと、その手を須藤に掴まれてしまった。