【長編】唇に噛みついて
そう思い、また涙を一粒落とす……。
その瞬間。
あたしはりっちゃんに突然抱きしめられた。
……え?
「オレ、ずっときーの事好きだった」
その言葉にあたしは目を丸くする。
好き……だった?
ずっと……?
「小さい頃からずっと……きーが好きだ」
「りっちゃ……」
嘘……。
りっちゃんが、あたしを好き?
嘘でしょ?
言葉を信じる事ができなくて、あたしは固まる。
するとりっちゃんはあたしを抱きしめる力を強くした。
「きーの笑顔が好きだった。久しぶりに会った時、須藤と付き合ってるって聞いて……オレ泣きそうだった」
掠れた声があたしの耳へ入ってくる。
りっちゃんの腕の温もりから、りっちゃんの気持ちが伝わってくる。
「でも……幸せそうな顔で笑ってるから、しょうがないって思った。だけど」
そう言うと、りっちゃんはあたしから離れて、あたしの両肩を掴むと真剣な瞳があたしを捉える。
「今……須藤がきーを悲しませてるなら、オレは引かない。引けない。何が何でも須藤からきーを奪うよ」
……ドキ。
心臓が大きく脈を打つ。
ジッとあたしを見つめるりっちゃんからいつまでも目を逸らせないでいると、りっちゃんはさっきの真剣な表情とは打って変わって、優しい瞳であたしを見下ろした。
「今は返事聞かないよ。でも……自分の気持ち伝えちゃった以上、もうオレは手加減じないから」
そう言うと、りっちゃんはそっとあたしに近づいてくる。
そして……。
……チュ。