【長編】唇に噛みついて
零の事でいっぱいなのに……。
零以外考えられる訳ない。
だけど……。
「相手が幼馴染だもんねぇ」
あたしに告白してきたのは、りっちゃん。
りっちゃんがすごく優しくていい人なのは知ってる。
だから……。
やっぱり考えちゃうの。
想像しちゃうの。
りっちゃんの気持ちを……。
「はぁ……」
ため息をついて、テーブルに顔を伏せる。
すると真弓はあたしの頭を撫でながら言った。
「でもやっぱり……幼馴染の事も大事だと思うけどさ?須藤くんと話した方がいいと思うよ」
「……」
顔を伏せたまま黙り込んでいると、真弓は優しい声で言った。
「怖いのは分かる。あたしも怖かったもん。でも話したらさ、あたし達はまた元に戻れたし。聖菜も話してみるべきだと思うよ」
そう……だよね。
いつまでも逃げてちゃいけないよね。
このままズルズル距離を置いても、何も始まらない。
それにこんないつまでも気持ちが晴れないまま悩んでるのも嫌。
さっさとすっきりした方がいいよね。
「うん……。分かった。話してみる」
そうだ。
真弓は、ちゃんと間島くんと話したんだよね。
あたしだけ逃げてちゃいけない。
立ち向かわなきゃ。