【長編】唇に噛みついて
そして真剣な顔で見つめてくると耳元で囁いた。
「ねぇ……キスしていい?」
はぁ!?
「ふざけんな!」
あたしは思いっきり須藤の顔面に手を置いて押した。
手を放して須藤を睨むと、ムスッとしている。
「あんた彼女いんじゃないの?」
「は?」
だってほら……。
前見た時、女子とイチャイチャしてたし。
思い出していると、須藤はフッと笑った。
「あぁ、あれは違う……」
「へ?」
違う?
その答えにあたしはキョトンとした。
そんなあたしを見つめて須藤は口を開いた。
「あれは、お友達」
そう言ってあたしの唇に人差し指を当てた。
こいつは友達の女とエッチすんのか。
こいつは彼女じゃない女と平気ですんのか。
「最低……」
須藤を睨みながら冷たく言い放った。
こいつも同じ。
最低な奴。
あたしは無理矢理須藤を立たせて、自分も席に立つと2000円をテーブルに置いて歩き出した。
「あたし、あんたみたいな最低な奴嫌いなの」
それだけを言うとあたしはファミレスを出た。