【長編】唇に噛みついて


いや……違ったね。
零と出会ったあの日から、あたしは……。
零の1番じゃなかったんだよね。
零の特別は……最初から最後まで……。
真寿美ちゃん1人だった。


初めから……こうなる事は決まってたんだ。


でも……。


「うぅ……」


やっぱり、零が好きだよ。
初めからやり直したい。
出会ったあの日から……やり直したい。
零を心から、あたしに惚れさせてやりたい。
できるなら……。
零の傍にいたかったよ。
あたし、気づかないフリしとけばよかったのかな。
そしたら……。
今も、零の傍にいられたのかな。


全てを間違えてしまった。


戻りたい。


「戻りったいよおぉ~……」


あたしこんなに泣き虫じゃなかったのに。
涙が止まらない。
それだけ……。
零を好きになってたんだね。
大好きになってたんだね。


でも……。
もう、戻れないんだ。
あの頃の2人には……。


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