【長編】唇に噛みついて
◆5◆
背中
⌒⌒Kiyona
\/side
零と別れて、1週間が経とうとしている。
「なぁ……」
「ん?何よ」
「あいつ……ずっとああなのか?」
そう言って、デスクに頬杖をつきながらボーッとしているあたしを指差す水谷。
腕を組んで水谷の隣に立つ真弓はため息をついた。
「もうずっとあんな感じ」
「マジかよ」
真弓の答えにギョッとする水谷。
すると真弓はまたため息をついた。
「あんな調子だから仕事なんなくて……今日も残業」
その言葉に今まで黙っていた品川は腕を組んで唸った。
「うーん……。相当ショックだったんだね」
なんて、あたしを3人が見つめている……なんて事も知らずに。
あたしはデスクに頬杖をついたまま、何もない一点を見つめる。
「はぁ……」
ふと我に返ると、出てくるのはため息ばかり。
ハッとして仕事に取り掛かってもまたボーッとしてしまう。
すると今まで遠くで今まで黙っていた真弓が、ゆっくりとあたしの方へ歩み寄ってきた。
「聖菜」
優しく名前を呼ぶと、あたしの頭をそっと撫でてきた。
それに気づいて顔を上げると、真弓達があたしを見ている事に気づいた。
その心配そうな顔を見て、あたしはハッと我に返る。
……みんなあたしの心配してくれてるんだ。
あたし……みんなに心配かけてるんだ。
そうだよ。
このままウジウジしてたらいけないよね。
立ち直れないままでいたら……零だってきっと。
いつまでも好きなままでいたらきっと、迷惑になっちゃう。
あたしは……この気持ちを封印しなきゃいけないんだ。
そう思いあたしは真弓に笑顔を向けた。
「ごめんっ……もう大丈夫だから」