【長編】唇に噛みついて
「鼎は……ほんと偉いな」
「え!?」
「明後日って言ったのに、今日持ってきてくれるなんて……お前には驚かされる」
そう言って先生はまた微笑んだ。
「鼎が級長でよかった」
級長……か。
生徒としか見てない。
分かってるけど、現実を突きつけられた気がして胸が痛い。
「……先生」
辛いよ……。
教師と生徒っていうあなたとの今の関係が。
届かないこの想いが。
言えない気持ちが。
もう……黙っているのも。
「ん?」
俯いて唇を噛みしめるあたしに優しい顔して首を傾げる先生。
「先生……好き」