【長編】唇に噛みついて
零がまた女遊びが激しくなったって噂を聞いて、慌ててあたしは零の元へ向かった。
すると零の隣には学校でも不純行為で有名な3年の女子がいるのに気付き、あたしは心臓が変に揺れた。
「……零」
「…………」
呼んでも黙ったままの零。
あたしの目を一切見ようとしない。
それに零は昔に戻ったみたいに冷たく死んだような目をしている。
「零……。聖菜さんはどうしたの?」
そう聞いても答えない零。
あんなに大切にしてた聖菜さんはどうしたの?
聖菜さんしか見えてなかった零はどこに行ったの?
どうして零の隣にいるのは聖菜さんじゃないの?
分からない事だらけだった。
するとずっと黙っていた零が低い声で言った。
「知るかよ……あんな女」
「え?」
……あんな、女?
意味が分からずキョトンとすると、零は小さく呟く。
「あいつは……俺を捨てて、あいつのとこに行ったんだ」
「あいつって……誰?」
「九条……」
……先生?
零の口にした名前にまた心臓が変に揺れる。
……まさか。
先生の好きな人って……。
聖菜さんだったの?