【長編】唇に噛みついて


慌てているあたしの頭の横に腕を置いて、あたしの顔を覗き込んできた。


「何よ……」


あたしは整った須藤の顔に思わず赤面すると、あたしの反応を見た須藤はニッと意地悪な笑みを浮かべた。


「きーちゃん。そういう顔は、誘ってるようにしか見えないよ?」


はぁ!?
きーちゃん!!
そんな呼び方された事ないっつーの!
……てか。


「誘ってないわよ!」


あたしはキッと須藤を睨んだ。
すると須藤はフッと笑って顔を近づけてきた。


「俺は……本能に生きてるんだ。誘ってなくても襲いたくなったら襲う」


耳元でそっと囁くと、須藤はあたしの顎をクイッと持ち上げて荒々しく口付けてきた。


「んっ……」


あたしは離れようと、須藤の胸に手をついて押そうとしたけど。
そんな抵抗は須藤にはまったく通用しなかった。


あたしの後頭部を大きな手で支えて、グッと奥まで唇を押し付けてくる。
息もできなくらいに深くて。
あたしの目にみるみる涙が溜まる。


駄目……。
好きでもない人とのキスなんて。


あたしは必死で抵抗するけど、途切れ途切れの抵抗は須藤の大きな手によって無になってしまう。


「ん、ちゅ……」


嫌なのに……。


須藤から香ってくる香水に。
唇の冷たさに。
顔に触れる柔らかい髪に。
あたしを支える腕に。


ドキドキが止まらない。


「っうぅ~……」


唇をようやく解放されて、あたしは息を荒げながらその場にしゃがみ込んだ。


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