【長編】唇に噛みついて
「どうして、謝るんですか?」
謝られた真寿美ちゃんはキョトンとする。
分かんないけど……。
でも、りっちゃんの事とか……。
同情とかじゃなくて、何となく悪い気がして……。
謝らずにはいられなかった。
「謝るんだったら……零とちゃんと話してください。そして誤解を解いてください。零……聖菜さんと別れてから、また前みたいに戻っちゃったんです」
「え?戻ったって……」
「前みたいにいろんな女の子と一緒にいるのを見かけるようになりました。多分それ以上もしてるかも」
嘘……。
「お願いです!零には聖菜さんだけなんです!聖菜さんしか零を救えないんです!会いに行ってあげてください!」
そう言って涙声で真寿美ちゃんは頭を下げた。
その姿を見て……あたしは独り言のように呟いた。
「会いに行ったら……零はあたしの話聞いてくれるかな」
すると真寿美ちゃんはニッコリ笑った。
「分かりません。でも……好きだったらきっと、戻れると思います」
好きだったら、か……。
零……はあたしをまだ好きでいてくれてるかな。
こんなあたしを許してくれるかな。
「ちゃっちゃと仲直りして、先生を諦めさせてください♪ライバルが聖菜さんなのはちょっとやりづらいけどあたし、まだ先生を諦めませんから♪」
強気な言葉……。
でも笑顔でそう言う真寿美ちゃんは泣いていた。
ほんとに強い子……。
そう思いながらあたしは覚悟を決めた。
やっぱり零が好き。
あたしには零しかいないんだ。
それに零の為にも、りっちゃんの為にも、真寿美ちゃんの為にも、自分の為にも……。
話さなきゃいけない。
そう思ったんだ。