【長編】唇に噛みついて
パチ。
机に顔を伏せ、いつの間にか寝ていた事に気づいた。
……夢、か。
てか、思い出してただけか?
以前、鼎と話した内容を思い出してオレはため息をついた。
机の上の時計を見ると、17時を過ぎている。
月曜日はいつも定時で帰っているオレは、時間が過ぎているのを確認し、荷物をまとめて職員室を出た。
鼎の話では……。
鼎がオレに告白して、オレが振った後。
須藤の元へ行ったらしい。
その時須藤ときーは会う約束をしていた。
鼎が須藤の家に着いた時、その約束の時間前だった為に須藤はきーに電話をして時間を遅らせるように頼んだ。
でも、その時……きーはその現場を目撃していて。
きーは須藤が自分ではなく、鼎の事が好きなんだと勘違いをしたって訳か。
だから、きーは自分が振られたって言ったのか。
で、須藤はオレの一件で自分ではなくオレを選んだと思って。
きーに振られたって言ったのか。
話を思い返して、再度納得をする。
2人の別れた原因は……すれ違い。
オレは……どうしたらいいんだろう。
そう迷いながらもオレは、嫌いになって別れた訳ではないと知りながら。
それでもきーがオレの所に来てくれればいい、なんて思ってしまう。
校舎を出ると、風が吹き抜けた。
チラホラいる生徒の流れに沿って、校門へ向かう。
と、ある姿にオレは気づく。
……きー。
校門の前で誰かを待つきーの姿。
その姿は年の割に可愛らしさがあり、思わず心臓をドキッとさせる。
……きーは、誰を待ってるのかな。
オレ?
それとも須藤?
そう思いながら足を進めていくと、オレの存在に気付いたきーはオレの方に歩み寄る。