【長編】唇に噛みついて


馬鹿野郎……。
あんな奴人間のクズだ。


全部あたしが悪いのかよ。
浮気する方が悪いのに、された方が悪い。みたいな空気になってんじゃん。
あんな言い訳、あたしが悪いって言ってるようにしか聞こえない。


性格がきついとか。
口が悪いとか。
全然女らしくないとか。
そういうの全部分かってくれるから付き合ったのに。
それが堪えられなかったとか……。
そんなの酷過ぎじゃん。


「馬鹿野郎ー!!」


あたしは人の視線も場所も考えずに叫んだ。


馬鹿馬鹿馬鹿!!
大馬鹿者!


涙を目に溜めながら上を見上げた。


くそぉ……。
何でこんなに天気いいんだよぉ。
あたしの気持ちは大雨だっつぅの!!


そう思った時だった……。


「っな!?」


あたしは目の前に映った光景にあたしは目を見開いた。


目の前にはあたしの母校。
その高校の自転車置き場に、2人の男女。
その男女の格好に言葉を失った。


胸元が大きく開き、乱れた格好の女子高生。
そしてそんな女子高生を抱きしめる男子高生。


……信じらんない。
場所を考えろよ。


そう思った時。
男と目が合ってしまった。


目に涙が溜まっていたあたしは、慌てて視線を逸らして駆け足でその場を去った。


< 3 / 286 >

この作品をシェア

pagetop