【長編】唇に噛みついて
すると疑いの眼差しで、真弓はあたしを見つめる。
「ふーん。興味ないのに。恋愛モノのDVDは観るんだ」
う……。
こいつ、何故こんなに鋭いんだ。
顔が引きつるのが分かる。
すると真弓はあたしの胸座を掴んで自分の方に引き寄せると、無表情で。
「何か隠してんでしょ?さっさと吐きなさいよ」
って言った。
その表情は不機嫌そのもので、あたしは俯いた。
「昨日……須藤が同じマンションだって知った」
「は?須藤くん?」
「うん」
「で?」
「……キスされた」
「は?」
真弓のキョトン顔。
ですよねー。
訳分かんないですよねー。
すると真弓は顔をグッと近づけて言う。
「どういう事それ!?詳しく教えてよ!」
そう言ってる真弓の顔は笑みが零れている。
……真弓。
絶対楽しんでるな。
その事と、昨日の事に腹が立って、あたしは眉間に皺を寄せながらフイッと視線を逸らして腕を組んだ。
「知らん!!あんな奴!」
ご立腹なあたしを見て真弓は苦笑いした。
「何か分かんないけど……好き同士のキスではないみたいね」