【長編】唇に噛みついて


残業もなくあたしは5時頃真弓と会社を出た。
苛立ってるあたしに真弓が、


“パァッと飲み会しよう!”


って事であたし達は居酒屋へ向かう。
為に2人で歩いていると。


「……げ」


あたしは変な声を出してしまった。


だって会社の目の前で、制服姿の須藤が立っていたから。
長身で整った顔立ち。
一際目立つからか、周りを歩いている人達は須藤を見る。
通り過ぎる人は必ず須藤に振り返る。


それを気にも留めず涼しい顔している須藤。


……何であいつ、ここにいるのよ。


あたしは咄嗟に真弓の後ろに隠れた。


「は?どうしたのよ」


あたしの行動に怪訝そうな顔をする真弓。
そんな真弓にあたしは小声で呟いた。


「須藤がいる……」


「え?どこ?」


真弓は顔をパッと明るくしてキョロキョロする。
するとすぐに真弓は須藤を見つけた。


「ホントだ。あれ、聖菜の事待ってんじゃないの?」


まさか!!
そんな訳ない!


「ま、まさかぁ」


あたしは顔が強張る。


そんな訳ないよね?


そう思って真弓の影から覗き込んだ時だった。


パチ。


空しくも合ってしまった視線。
目が合ってしまった。


「聖菜!」


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