【長編】唇に噛みついて


「で?何でまたあんたは隣に座るのよ」


ファミレスについて、また隣に座ってあたしを見ている須藤を横目で見ながら呟いた。


「あ?俺がどこに座ろうが関係ないだろ?」


「向かい側が空いてるでしょうが!」


あたしは大きく向かい側の席を指差して怒鳴った。
すると、ダルそうに頭を掻きながら須藤は呟く。


「だって……向かい側だと、聖菜が遠いじゃん」


ドキ……。
って何だこの、ドキは!!
違う!断じて違う!


「遠くていいでしょ」


そう言ってあたしは赤い顔を隠す為に顔を背けた。
するといきなりあたしの肩に須藤が腕を回してくる。


「な!」


「悲しい事言わないでよ。俺はきーちゃんの隣が好きなの。それに……」


耳元で囁きながらおでことおでこをくっつけてきた。
それのせいでパチッとしっかり合ってしまう目。


……近っ。
てか、こいつ。
顔整いすぎなのよー……。


あたしは思わず顔を赤らめてしまう。
そんなあたしを見た須藤はニコッと笑った。


「俺がしたい時にキスできるしー」


ゴツ。


あたしは須藤の頭に拳骨を食らわした。


「っ痛。て、てめぇ何しやがんだ」


須藤はすっごく不機嫌そうな顔であたしを睨みつけた。


「悪いけど。あたしは好きな人とじゃなきゃキスしたくないの。そんな誰とでもキスするような軽い女じゃないの」


だから……。
あんたとのキスだって、ホントは。
すごいショックなんだから。


目を伏せると、須藤はあたしの名前を小さく呼ぶ。


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