【長編】唇に噛みついて
「そういう事だから。もう関わらないで。あんたもいい人見つけな」
須藤を睨みながら呟くと、あたしはジュースを口に含む。
するとあたしの顔を覗き込みながら須藤は頬杖をつく。
「ふーん。でももし、聖菜が俺のいい人だったら?」
「ぶはっ!!?」
「うわっ。汚っ」
最悪……。
あたしは須藤の言葉にジュースを噴出した。
それは見事に須藤のブレザーにかかって、須藤は慌てて立ち上がった。
「おまっ、何すんだよ!?」
「しょうがないでしょ!?あんたが変な事言うから」
いきなり真剣な顔で……。
吸い込まれそうな綺麗な瞳であたしを見るから。
甘い声で優しく問いかけてくるから……。
ってあたしは何考えてるのよ……!
「あたし……絶対おかしい」
頭を抱えて呟くと、あたしはテーブルに顔を伏せた。
「え?何か言った?」
ボソッと呟いたから、幸い須藤の耳に届かなかった。
相手は高校生よ?
しかもチャラ男……よ?
最悪な奴の言葉に、何動揺してんのよ。
少し心臓の鼓動が早くなる。
するとまた須藤はあたしの顔を覗き込んでくる。
「きーちゃーん?」
「何?」
少し顔を上げて返事をすると、須藤はニッと笑う。
う……。
ムカつくくらい格好いい。