【長編】唇に噛みついて
ひとつの傘
⌒⌒Kiyona
\/side
どんよりとした雲の隙間から雨が降り出す。
季節は梅雨に突入した。
「あー……やだな」
仕事の合間の休憩に、あたしは1人紅茶を買って自動販売機に寄りかかる。
そしてムッとしながら指に髪を絡める。
もお……梅雨はやっぱり嫌い。
気分は晴れないし。
髪は湿気でぐしゃぐしゃだし。
「はぁ……」
小さくため息をついて窓から外を眺めた。
せっかく珍しく今朝は晴れてるって思ってたんだけど。
雨が降り出してきてしまった。
……どうしよう。
今日傘、持ってきてなんだよね。
すっかり忘れちゃってた。
「今日は、濡れて帰るしかないか……」
小さく呟いてあたしは、仕事場に戻る。