【長編】唇に噛みついて
キョトンとして真弓を見る。
すると真弓は再び口を開いた。
「傘貸してあげるって言ってんの」
「ホント!?」
「うん」
あたしを睨みながら頷く真弓にあたしは思い切り抱きついた。
「ありがとー!!真弓!これで濡れないで済むー!!」
「ちょっ!苦しいってば!!」
あたしの抱擁に嫌な顔をする。
まったく失礼な子だ。
まっ傘貸してくれるからいいけど。
そう思ったあたしは真弓に微笑みかけて仕事を始めた。
するといきなりあたしの前に水谷が現れた。
「っよ!!」
「うわ!!」
突然水谷の顔が目の前に現れてあたしは大声を出してしまう。
「いきなり出てこないでよ!!」
あたしは水谷を睨みながら言うと、水谷はフッと笑った。
「あぁ、悪ぃ。ってそんな事言ってる場合じゃなえんだよ」
軽く謝って水谷はあたしを見下ろした。
……?
キョトンとしていると、水谷は口を開いた。
「あのさ、今日……」
「断る!!」
あたしは即答し、水谷を睨んだ。
「まだ言ってねえじゃん!!」
そう言って水谷はあたしを睨んだ。
言わなくたって分かるっつうの。