【長編】唇に噛みついて
残業……?
マジすか。
「あー……はい」
引きつった笑顔を課長に向けて頷いた。
残業かよ……。
はぁ……。
課長があたしの返事を聞くと、そそくさ去って行った。
その後ろ姿を見て、あたしは肩を落とす。
するとあたしの顔を真弓が覗き込んできた。
「まぁ……ドンマイ」
そう言って真弓はパソコンに視線を戻す。
その姿を見てあたしは真弓に口を開いた。
「真弓さん?」
「ん?」
「こういう時“ドンマイ”って言葉が1番傷ついて、ムカつく事知ってますか?」
「うん」
っくぅ~。
知っててそういう事言うのか。
あたしがそういうの嫌いな性格だって知ってるくせに!
するとあたしをチラッと見た。
「しょうがないでしょ?あんたが私語多すぎて仕事進んでないのがいけないんだから。自業自得よ」
今すっごい自業自得って言葉を強調したよね?
分かってますよ……そんな事。
ムッとしつつも、これ以上言うのは時間の無駄だと思い、怒りを堪えて席に着く。
だって……早く仕事やって、少しでも残業時間を減らしたい。
そう思いあたしはパソコンを睨みつけた。