【長編】唇に噛みついて


びっくりした?
真弓ってこういう子なの。
普段は静かで可愛らしいんだけど。
キレると怖い。
二重人格なんだ。
まぁその普段の可愛らしいっていうのは、作ってるんだけど。
結構腹黒いんだよね、意外に。(笑)


その腹黒さ、あたし的には結構好き。
だから仲がいいのかもしれない。


すると同じく同期の男。水谷が近づいて来た。


「何だよー。柏原。何泣いてんだ?」


その他人事のような声にムッとした。
まぁ……他人事なんだけど。
今のあたしにはそんなの関係ない。


「は!?うっさいし。男は黙ってろぉ」


泣きながらあたしは水谷を睨みつけた。
するとそんなあたしにギョッとしながら水谷は口を開いた。


「な、何だよー。おれにキレんなよ」


キレるに決まってるだろ!
お前もどうせ同じ男だ!


「男は性欲の固まり!!すぐに女を裏切るんだぁ」


怒鳴りながらあたしは机に顔を伏せた。
すると壊れたあたしを見下ろしながら、水谷はあたしの背中を擦っている真弓に聞く。


「こいつ……何があったんだ?」


「んー。彼氏に浮気されて別れたんだって」


そう説明をする。
すると水谷は眉間に皺を寄せた。


「あぁ……。そうだったのか」


気まずそうにそう声を漏らす水谷。
そしてあたしの肩に手を置いて口を開いた。


「まぁ……元気出せよ」


「お前には分かんないよー!!女の気持ちなんて!!」


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