【長編】唇に噛みついて
それから2時間……。
ようやく仕事を終えて時計を見ると、10時を回っている。
「うわ~……もうこんな時間だよ」
そう独り言を呟いて、あたしは荷物をまとめて始める。
すると携帯が光りだす。
……?
それに気づいて携帯を開くと、さっきの番号から着信。
誰だろう。
あまり登録していない番号の電話に出るのは好きではないけど、3件も着てるってのもあってあたしは通話ボタンを押した。
「……はい?」
『……俺』
え……。
その声を聞いてあたしは固まる。
そして眉間に皺を寄せる。
「……何であんたがあたしの番号知ってんの?」
電話越しに聞こえてくる声は、まぎれもなく須藤の声で。
あたしは不機嫌になりながら聞く。
するとしばらくして須藤は口を開いた。
『……今どこ?』
あたしの質問に答えず、問いかけてくる須藤に少しムッとした。
「ちょっと……あたしの質問に答えてよ」
『まだ会社?』
……こいつ全然あたしの話聞いてない。
その事に呆れながらあたしは頷いた。
「そうだけど?」
すると少し優しい声が聞こえてきた。
『そっか……出てこなくて心配してたんだけど。仕事だったのか』
……へ?
出てこなくて?
須藤の言葉を聞いてあたしは口を開いた。