【長編】唇に噛みついて
何さ何さ!!
それが傘に入れてもらってる人の態度か。
ムッとしたあたしは、わざと思い切り傘を下げた。
「ってぇ!」
予想どおり須藤は思い切り頭をぶつけ、がつっと鈍い音がした。
頭を擦りながら須藤はあたしを鋭い目つきで睨んだ。
……う。
「い、入れてもらっておいて、そういう口叩くからよ!」
そう言ってあたしは須藤の視線から逃れようと顔を背けた。
すると須藤は長い腕をあたしの腰に絡める。
ええ!!?
「ちょっと、やめなさいよ!」
そう言って離れようとするけど、グイッと引き寄せて唇を甘噛みする。
じんわりと感じる痛みに顔が熱くなる。
「須藤ぅ~!!?」
あたしは目を見開いて、そして須藤を睨む。
すると須藤はあたしに顔をグッと近づけてあたしの唇をぺロッと舐めた。
「俺に反論した罰」
はぁ!?
こいつ何言ってるのよ。
もう呆れて言葉も出ない。
口をパクパクさせていると、須藤はフッと笑った。
「あ、傘に入れてくれた御褒美の間違いだった?」
……!!
驚いてまたまた言葉が出ない。
すると須藤は満足そうな笑みを浮かべて、あたしから傘を奪った。
「あ……」
「俺が持つ」
そう言って須藤は歩き出す。
それにあたしも慌てて着いていく……けど。
……速い。