【長編】唇に噛みついて


「ちょっと!速い!」


そう言って須藤の制服の裾を掴む。
すると須藤は振り返った。


「え?普通だろ」


って……。
足が長いから?
これが普通なんだって?
言いたいのかぁー!!


「ムカつく……」


そう言って睨むと、須藤はフッと微笑んだ。


「しょうがねぇな」


なんて呟いてあたしの頭を撫でた。


「今日の俺は優しいから、ゆっくり歩いてやる」


また……優しい笑顔。
その笑顔を見て、嫌でもドキッとしてしまう。


悔しいな……もう。


「くっしゅ……」


ボーっとしていると、くしゃみが聞こえてあたしは我に返る。
すると須藤はもう一度くしゃみした。


「ちょっと……風邪引いたんじゃない?」


そう聞くと、須藤は鼻を啜りながら答えた。


「んー……どうだろ?……えっくし」


……完璧風邪引いてるじゃん。


そう思いながら須藤を見つめると、須藤は首を傾げて意地悪な笑みを浮かべた。


「何?心配?」


!!?


「べ、別に!……ただあたしを待ってて風邪引いたなんて言われたら、嫌だなってだけ」


赤くなるのを隠しながら言うと、須藤の腕が伸びてくる。
そしてあたしをグイッと近づけて囁いた。


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